過酷な現場で「デジタルロードセル」を普及させるために歩んだ道は、まさに「故障の連鎖」を断ち切るための技術革新の連続でした。
特に、現場の担当者を最も悩ませる「衝撃」「雷」「故障診断」の3点において、どのような解決策を打ち出したのか、その挑戦の裏側に迫ります。
1. 衝撃に強い「デジタル」への進化
デジタルロードセルは、センサー内部にA/D変換器(アナログ信号をデジタルに変換する基板)を内蔵しています。そのため、物理的な衝撃が加わると、精密な電子回路が真っ先にダメージを受けてしまうという弱点がありました。
この弱点を克服するために「構造そのもので衝撃をいなす」設計を徹底。ロードセルに無理な横荷重や衝撃が加わらないよう、受け金具やマウント構造を最適化し、デジタル基板を物理的な「揺れ」や「歪み」から隔離するパッケージング技術を確立しました。
2. 落雷対策の決定打:電源ライン「Vccの独立」
デジタル式において、物理的な衝撃と同じくらい恐ろしいのが「電気的な衝撃(雷サージ)」です。一般的なデジタルロードセルは、複数のセンサーが一本の通信・電源ラインで繋がっているため、一箇所に落雷を受けると、電圧(Vcc)の変動が全センサーに伝わり、システム全体が全滅するリスクがありました。
この飽きなき挑戦が生んだ一つの答えが、「Vcc(電源)の独立制御」です。
- 絶縁と独立: 各ロードセルの電源系統を個別に管理、あるいは高度に絶縁することで、一つのセンサーが電気的に破壊されても、その影響を他へ波及させない仕組みを構築しました。
- サージ保護装置の標準化: デジタル化のメリットを活かしつつ、アナログ時代以上に堅牢な避雷回路を組み込むことで、「雷に弱いデジタル」という常識を覆したのです。
3. 「見えない故障」を可視化する自己診断機能
アナログロードセルの時代、1つが故障しても「なんとなく値がおかしい」ことは分かりますが、どのセンサーが原因かを特定するには、配線を外して一つずつ点検する膨大な手間が必要でした。
この課題に対し、デジタルならではの「自己診断機能」を極めました。
- リアルタイム監視: 内部の各センサーが、自分自身の電圧や通信状態を常にチェック。
- ピンポイント特定: 異常が発生した際、指示計の画面上に「どの場所のロードセルが、どんな異常か」をエラーコードで即座に表示。
- 予兆検知: 完全に壊れる前の「不安定な挙動」をキャッチし、ダウンタイムを未然に防ぐ運用を可能にしました。
4. 現場を止めない、という哲学
挑戦の根底にあるのは、「計量器は止まってはいけない」という強い使命感です。
「衝撃」による物理的な破壊、「雷」による電気的な全損、「故障箇所の特定」という時間的ロス。これらすべての「衝撃」からユーザーを守るための技術が、デジタルロードセルには凝縮されています。「重さを量る」という基本への誠実さが、最先端のデジタル技術を「真に現場で使える道具」へと昇華させたのです。


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